朝日新聞を応援するブログ

新聞業界、特に朝日新聞を応援するため、様々な提言をしていきます

「新聞に軽減税率を要望」の記事がたたかれた四つの理由

「新聞に5%の軽減税率を 日本新聞協会が要望 - 47NEWS」という記事がNewsPicksのTOP20で1位になっていました。

コメント欄はこちら

「新聞ふざけるな」という声が、ざっと95%です。

以下がLIKE数ので上位3人の意見。

f:id:amazon2287:20140730233123p:plain

 

こちらが「はてブ」の コメント欄。

現時点で150人くらいがブックマークしてますが、意見はNewsPicksとだいたい同じ。

10代~30代の、普通にネットを活用する世代の世論と言っていいでしょう。

そして、この世代の世論は今後、日本全体の多数派になっていきます。

 

彼らはなぜ、こんなに厳しいんでしょうか。

ここでは四つの原因を挙げます。

 

  1. 「ニュースは無料で読むもの」と思っている
  2. 強烈なマスコミ不信
  3. 新聞社を「古いビジネスモデルにしがみつく抵抗勢力」だと見ている
  4. 高給への嫉妬 

 

「ニュースはタダ」という意識を改革せよ

順に説明していきます。

まず1の「『ニュースは無料で読むもの』と思っている」について。

これが新聞業界にとって最大の課題だと思います。

彼らがニュースを読むのは、Yahoo!などのポータルサイトの他、SmartNewsやGunosy、LINE NEWS、NewsPicksなどのキュレーションアプリを通じてです。

そこではユーザーに一切課金されないため、「ニュースに金払うなんてバカ」「紙の新聞を読む人はPCやスマホを使えない情弱(情報弱者)」という意識が醸成されます。

報道機関がどれだけのコストをかけて取材しているかというのは、彼らにとって知ったことではありません。

したがって、「新聞社の経営が傾く→コストのかかる取材ができなくなる→質の低い記事しか読めなくなる→紙の新聞の読者がガッカリし、部数減が加速→何社かつぶれる→ニュースの供給者が減る」という循環に想像を及ばせることもありません。

 

とにかく「ニュースは無料」という意識を変えない限り、この負のスパイラルは止まらないでしょう。

ではどうやって「ニュースはお金を払って読むもの」と思ってもらうのか。

まず大前提として、全社が歩調を合わせ、各社のサイトにペイウォール(無料で読める記事の本数を「月10本まで」というふうに制限する)を導入することです。

ここで例えば「産経だけは無料で読み放題」なんてことになれば、みんな産経の無料記事を読むでしょうから、抜け穴があってはダメです。

今回のように軽減税率では歩調を合わせることができるんだから、できない話ではないでしょう。

 

その上で、Yahoo!などに配信するニュースを一気に値上げする。

Yahoo!には有料配信をしているはずですが、超格安だと聞きます。

また、ニュースキュレーションアプリへの配信も一気に有料化する。

現在は「無料で配信し、自社サイトへの誘客を通じて広告収入を得るモデル」が確立されていますが、これじゃダメです。

ネット広告の収入なんて二束三文です。

大事なのは、現在の紙の購読料に代わる収益源として、配信自体でお金を徴収することです。

ニュースキュレーションアプリは新聞社のコンテンツにただ乗りして(さらに言えば、新聞社の販売・広告収入を奪う形で)荒稼ぎしているので、強気に出るべきでしょう。

配信するコンテンツの値上げにより、Yahoo!やキュレーションアプリ側もユーザーから購読料を徴収せざるをえなくなるかもしれません。

 

あと、例えばニュース代として1人当たり月300円とか500円とか払ってもらう仕組みを確立するのも手だと思います。

全新聞社共通のシステムを構築して、そこで毎月一定額を払ってもらう(ケータイ料金やプロバイダ料金と一緒に毎月請求する)。

そこで「支払い済み」の認証をもらわないと、Yahoo!やSmartNewsなどでニュースを全文読めない仕組みにしてしまう。

言わば、デジタル時代の購読料収入ですね。

「本人または同居の家族が紙の新聞を取っている場合、ネットニュースは無料で読める」とかいうオプションもありでしょう(紙の販売を下げ止まらせる動機になります)。

それで集めたデジタル購読料は、何らかの基準に基づき各社で分ければOKです。

 

この手法は、今ニュースを無料で読んでいる層の反発を招くでしょうが、理屈としては全くおかしくないし、紙の新聞を購読している層からは公平感ゆえ支持されるでしょう。

対抗して市民記者のネットワークみたいなのが出てきて、無料でニュース配信をしようとするかもしれませんが、彼らには記者クラブを開放して取材させてあげればいいです。

全国をカバーするのは難しいでしょうし、記事の質の面でもいまいちでしょうから、逆に新聞社の価値を知ってもらうきっかけになります。

海外では例がないかもしれませんが、日本は日本語の壁に守られたガラパゴスのため、こういった統制はやりやすいと思います(例えば英語圏だと、国をまたいだ報道機関で意思統一する必要があるし、英語で無料ニュースを流せる組織が無数にあるため難しいでしょう)。

 

とにかく新聞協会加盟社が歩調を合わせること、そしてスピーディーに実行することが肝心です。

各社のすり合わせに時間がかかっている間も、業界全体が沈み続けています。

集中協議で短期決戦にすべきだと思います(何年もダラダラやらない)。

 

マスコミ不信を放置しない

次に2の「強烈なマスコミ不信」について。

ネットにはマスコミ批判があふれています。

確かにマスコミ側に反省すべきところがあるのも事実ですが、中には事実無根の誹謗・中傷もあります。

問題は、マスコミ側が何ら反論をせず、黙っていることです。

沈黙していれば、中立者でさえ「痛いところを突かれたから黙っているんだろうな」という心証を持ちかねません。

たびたびこのブログでも書いていることですが、マスコミ側がネットでの広報PR戦略を見直す必要があります。

 

「新聞社は抵抗勢力」と思われないように

次に3の「新聞社を『古いビジネスモデルにしがみつく抵抗勢力』だと見ている」について。

今回のような軽減税率を求める動きは、特に若い世代から「既得権へのしがみつき」「改革に後ろ向きな守旧派」と見られがちです。

現にコメント欄は、その手の批判であふれています。

数カ月前に歌手のスガシカオさんが「CDを買ってくれないと、ミュージシャンは食っていけない」という趣旨の発言をしました。

いま音楽は、itunesでのダウンロードさえ廃れ、ストリーミングでの再生が主流です。

スガさんの発言は「時代の変化に対応せず、昔ながらのビジネスモデルにしがみついている怠慢な態度」ととらえられ、ネット上で批判が相次ぎました。

新聞社の軽減税率の動きも、同じ文脈で受け止められています。

上に書いた月300円のニュース代にも反発があるでしょうが、「紙とネットの読者両方に、取材コストを広く負担してもらうためだ」と説明し、理解を得るべきでしょう。

 

高給への嫉妬も一因

最後に4の「高給への嫉妬」について。

ことほどさように、この世代にとって「ニュースは金を払う価値のあるもの」ではありません。

おのずと「価値のない仕事をしている人間が、なぜ年収1千万ももらうのか」と考えるようになります。

したがって、例えば商社が新聞社以上の高給をもらっていても批判されることはないのに、新聞社だけが「あいつらズルい」と嫉妬されるわけです。

特にIT系の職場はまだまだ高給取りが少ないので「これからはオレたちの時代。自分たちこそ新聞社並みの給料をもらうべきだ」と考えるのかもしれません。

コメント欄を見ていても「まず人件費を削れ」という意見が目につきます。

「ニュースはタダ」という意識が変われば、風当たりも弱くなると思います。

 

以上、今回のニュースがボコボコにたたかれた理由を、ざっと四つ考えてみました

特に1番目の「『ニュースは無料』という意識の改革」が本当に大事だと思います。

インターネットには様々ないい側面がありますが、「ニュースは無料という意識をユーザーに植え付けた」という点で罪深いです。

朝日を始め、各新聞・通信社のみなさんには、今回の4点を押さえた上で、次の手を打っていただきたいと思います。