新聞業界は協力してニュースアプリを買収し、一気に有料化せよ
「紙メディアは『ニュースアプリ』をどう見る--新聞、雑誌、作家が語る」というCNET Japanの記事がNewsPicksで取り上げられていました。
NewsPicksのコメント欄はこちら。
途中経過ですが、NewsPicksの上位3人の意見はこうなってます。
まず、コメント中でも触れられていますが、毎日新聞の人が「本来我々がやらなくてはいけなかった」と語っている点について。
その通りなんですが、ではなぜ新聞社はキュレーションメディア(特にスマホ向け)を作れなかったのでしょう。
これは新聞社側にビジネス感覚が欠如していることが大きな原因だと思います。
これまで新聞社のビジネスモデルは、紙の新聞を売ることと広告を集めることが二本柱で、しかも寡占によって新規参入が阻まれていました。
要は、その二つだけやってればよかったのです。
しかも基本的に社長は記者出身ですから、ジャーナリストとしては優秀でも、ビジネスに関しては素人です。
ネット時代が到来した時はヤフーの伸長を予期できず、スマホ時代が到来してもキュレーションアプリの爆発的な普及を想像できなかった。
基本的にオジサン中心の会社ですから、若者のニーズがどこにあるのかも知らない。
社内の若手の意見を聞くにしても、そもそも新聞社に入る若者なんて、金もうけには大して興味のない人たちですから、あんまり参考にならない。
つまり、ネット時代の到来とともに、社外の意見を聞くべきでした。
しかし、新聞社には「なんでも自分の力でやるんだ」という自前主義の文化があり(印刷工場も販売店も全て自前で持っています)、外部の助けを借りたがりません。
最近は経営難により、こうした設備面の自前主義は崩れつつありますが、それでも大きな経営方針に関しては、まだまだよそ者を入れたがらない文化が根強いようです。
以下、五つのコメントについて個別に論評していきます。
まず抹茶ねこさん。
このコメントを土台にして言うと、今までの新聞社のビジネスというのは3段階に分かれていました。
つまり
- 製造(取材して記事を書く)
- 加工(編集。つまり記事に見出しをつけ、各ページに重要な順に記事を並べる)
- 流通(紙の新聞を配る)
です。
Yahoo!の登場により③の流通の半分を奪われ、キュレーションアプリの登場で残り半分も奪われてしまいました。
さらに、②も半分喪失したと言えます。
というのは、記事の中身はいじられないし、新聞社がつけた見出しもそのまま使ってもらえますが、どの記事を配信するかしないかという編集権はキュレーションアプリ側にあるからです。
抹茶ねこさんの意見は「新聞社の仕事は①(と少しだけ②)に特化していくだろう」とのことですが、これじゃ新聞社はつぶれます。
①と②ってお金にならないんです。
お金になるのは③の流通の部分。
現状ではそこが無料になってしまっている。
だから問題なのです。
次にNakagawaさん。
おっしゃる通りで、新聞社がつぶれると、キュレーションアプリのコンテンツがなくなります。
この方は「キュレーションメディアが課金して分配」という案を挙げていますが、これは筋が悪いと思います。
なぜなら価格決定権がキュレーションアプリ側にあるし、アプリをはさむことでマージン(中間手数料)分だけもうけが減る上、広告収入もアプリ側に持っていかれるからです。
別エントリーでも書きましたが、「ニュース代として月300円払って『認証済み』にならないと、キュレーションアプリで新聞記事を一切読めない」という仕組みを、全新聞社が協力して作るべきです。
あるいは、これは極論ですが、全新聞社と通信社でお金を出し合って、どこかのニュースアプリを買収してもいいと思います。
PC版サイトも開発し、各新聞社はそのアプリとPC版サイトにしかニュースを流さないことにします(自社サイトも有料閲覧のみにします)。
そのアプリは新聞記事以外の芸能ネタなんかも集めて、幅広く配信すればいいです(要するに、今のPC版のYahoo!みたいにしてしまう)。
同時に、Yahoo!を始めとするPC用ポータルサイトや、その他のニュースアプリへのニュース配信を停止します。
このアプリ(もしくはPC版サイト)にアクセスしなければまともなニュースが読めないので、「ニュースはただじゃない」という意識が根付き、月額300円くらいなら、みんな払ってくれるんじゃないでしょうか。
「紙の新聞を取っている人とその家族は無料」というのもいいですね。
さらに、現在はニュースアプリに奪われている広告収入も、そのまま新聞業界の懐に入るようになります。
次にKasakawaさん。
これは面白い見方かもしれません。
ネット時代の到来により、各社の記事が横並びで読めるようになりました。
確かに「朝日がクオリティペーパー」というイメージは崩れたように思います。
むしろ、若い世代の朝日新聞へのアレルギーは産経新聞並みではないかと感じるほどです。
今や、「朝日ブランド」とか「朝日ファン」なんていう言葉は死語で、一部の中高年層にしか通用しないと思います。
この一因は、朝日がネット上での広報戦略を練らず、批判やデマを放置したことでしょう(これも何度か過去に書きました)。
次にuzak1803さん。
同感です。
たびたび書いていますが、「ニュースが無料」になっているのが全ての元凶です。
新聞社が足並みそろえて課金しないと、弱いところからつぶれていきます。
「ニュースはただじゃない」を合言葉に、有料化を進めましょう。
最後に小林さん。
こうやって新聞社の力を認めてくれる人もまだいます。
コメントにある「手遅れになるまで本腰入れない」というオチは全く笑えません。
そうこうしている間に、「SmartNewsがGREEから18.5億円を調達した」というニュースが流れてきました。
新聞業界に残された時間は多くありません。