「見出しに『LINE』と入れたら批判コメントが殺到」問題を考える
またしても「朝日は早急にソーシャル担当者を置くべきだ」と感じるできごとがありました。
朝日が報じた「LINEで約束、決闘した容疑 少年13人書類送検」という記事。
まず最初に引用します。
少年グループ同士が無料通話アプリ「LINE(ライン)」を通じて決闘の約束をして殴り合いをしたとして、福岡県警中央署は24日、いずれも当時中学3年で、福岡市や同県の糸島市、粕屋郡内などの15歳と16歳の少年の計13人を決闘容疑で書類送検し、発表した。全員が容疑を認めているという。
発表によると、少年らは昨年11月16日午後、福岡市中央区の舞鶴公園やマンション敷地内で、1対1の殴り合いをした疑いがある。1人が小指の骨が折れる重傷を負った。
高校の体験入学会に参加していた福岡市の中学生(15)と粕屋郡の中学生(15)のトラブルが発端。「LINE」で「出てこいよ」「お前が出てこいよ」などのやりとりをして決闘の約束をした。舞鶴公園には見物人を含め約100人が集まり、通行人から「ケンカをしている」との110番通報があったという。
これに対するNewsPicksのコメント欄がこれ。
一時はNewsPicksのTOP20で2位まで来ていました(要するに、大勢に読まれ、コメントされたということ)。
今はLIKEの多い順に並んでいないかもしれませんが、TOP20に入っている間はLIKE順に並びます。
で、圧倒的多数のLIKEを集めたのがこのコメント。
162LIKEというのはNewsPicksではかなり大きな数字です。
このコメントにLIKEを押した人たちは、さらに同様のコメントを自ら書き込みます。
「またこうやってLINEを悪者にしようとする記事」「なんで題名にLINEが来るのかわからない。関係ないでしょ」とか、そんな感じのコメントであふれました。
これに対し、朝日新聞デジタル編集部の古田さんが途中でコメントを投稿しました。
それなりにLIKEを集めましたが、それでもLIKE数の順位で6番目か7番目です。
この件から学ぶべきことは三つ。
- 朝日新聞あるいは報道機関全体への不信感(特に若い世代)が半端じゃない
- 紙の新聞では当たり前の見出しをそのままネットに使っても理解されない
- 反論コメントは上位に来ないと読まれない
それぞれについて少し書きます。
まず1の「朝日新聞あるいは報道機関全体への不信感(特に若い世代)が半端じゃない」について。
批判的なコメントをしたのは、いわゆるネトウヨと呼ばれる人たちだけでなく、普通の大学生や若手の社会人が多そうです。
もはや朝日新聞は彼らにとってブランドではなく、むしろ「からかいの対象」「信じてはいけないもの」になりつつあるように思います。
逆に朝日新聞を支持する人は「ネットを上手に活用することのできない情弱(じょうじゃく=情報弱者のこと)」であるとさえ見なされている感があります。
これはネット上で朝日新聞が常にたたかれ、にも関わらず朝日側がそれを一切無視してきたことが強く影響していると思われます。
朝日側のネット広報戦略の失敗(というか戦略の不在)が招いた結果と言えます。
そして、彼ら若い世代の間には、報道機関全体に対する不信感も根強いようです。
例えば先日もハムスター速報で、次のような記事が流れました。
「マスゴミが『アニメを見る人=犯罪者』という印象を植え付けようと必死www」
ハム速は笑えるネタ、軽めのネタを扱うことが多く、高校生や大学生の間でよく見られているようです。
日常的にこういう記事に触れていれば、「マスコミはアニメやネットを悪者扱いしている」という印象を持つようになっても不思議じゃありません(ちなみにハム速は「高校生や大学生が何を面白がっているのか」を知るために非常に有用なので、ツイッターでフォローすることをお勧めします)。
次に、2の「紙の新聞では当たり前の見出しをそのままネットに使っても理解されない」について。
今回の古田さんのコメントは実に的確で、全く正論だと思います。
また、他のコメントの中にも「LINE関係あるでしょ」という意見もあります。
しかし、現実として「LINE関係ないだろ」という意見が圧倒的多数のLIKEを集めている。
そして、その事実が、「やはりマスコミはネットやアニメを悪者扱いしようとしている」という印象を若い世代の間で増幅させるわけです。
見出しには見出しのルールがあり、新聞社はそれを代々受け継いできたわけです。
そして、今までは新聞読者の側も、継続的に新聞を読むことで、その勘所というのを理解してくれました。
しかし、今やそもそも若い世代が新聞を読んでいない。
だから見出しのルールも知らない。
それよりも彼らが日常的に触れている「マスコミはネットやアニメを敵視している」という言説の方に共感する。
データの裏付けがあるわけではありませんが、あながち外れてはいないと思います。
この辺りのことを意識している人が、新聞社側にどれだけいるでしょうか。
最後に3の「反論コメントは上位に来ないと読まれない」について。
今回、古田さんが途中でコメントを投稿したのは素晴らしい対応だと思います(今までの朝日なら、相変わらず無視を決め込んでいたでしょうから)。
しかし、いかんせん投稿するタイミングが遅かった。
投稿が遅れると、コメントが下位に沈み、人の目に触れにくくなります。
いくらまともなことを言っても、読まれなくてはLIKEがもらえず、コメント上位に浮上することもできません。
おそらくNewsPicks読者の中には、コメント順位1番目だけとか、せいぜい3番目くらいまでしか読まない人がかなりいると思います。
その意味で、いかに早くこの手のできごとを把握し、迅速に反証コメントを投稿するかが大事です。
したがって、ここですでに2度書いてることですが(これとこれ)、朝日は社内にソーシャル担当者をさっさと設置すべきです。
朝日社内でこうした危機感が早く共有され、具体的な行動に移されるよう期待しています。